友達

中学生の時、外で遊ぶのがすごく好きな友達がいた。彼はテスト前でも勉強しようとせず、山に遊びに行こうと誘ってくるような、野生児のような男だった。結局、私もその誘惑に勝てず、テスト前の集中して勉強すべき時期でも山に遊びに行った。そのおかげで度々、徹夜をしてテストに挑むことになったが、その苦痛よりも山での冒険が楽しかった。

 

その日も山に遊びに行こうと誘われ、いつものように京都の北山に出かけた。何故だか記憶にないが、その日はいつもより山奥深くに入っていった。夕刻近くまで遊び、帰り道についた。そして帰路の途中で道が二股に分かれている地点に到達した時、どちらから来たか自信を持って判断できず、2人で立ち止まってしまった。「俺はこっちの道が正しいと思う」「いや、こっちだろう」と話し合っても意見がまとまらない。その結果、私はイライラして、「俺はこっちの道を進むから、お前は好きな方の道を行けよ」と友達に言って、スタスタと自分の選んだ道を歩き出した。

 

友達が私についてくる気配がなかったので、「あいつは別の道を選んだんだ」と思いつつも、もう夕刻であり、「とにかく自分が信じた道を行くしかない」と考えて歩みを進めた。しばらく歩くと(15分〜30分ぐらい)、行き先を示す看板を発見した。その看板の行き先は、帰るべき場所とは全然違っていた。そう、私が選んだ道の方が間違っていたのだ。「これは大変なことになった。もう夕刻だぞ、しかも山の中でひとり。あいつにも悪いことをした。」と後悔。急いで来た道を引き返し始めた。

 

しばらく引き返すと、友達が突然、目の前に現れた。なんと、間違った道を進む私のことを心配して追いかけてきてくれていたのだ。「お前、歩くの速すぎるよ。なかなか追いつかんやんけ。」と笑って話す彼に「ごめん。俺が間違ってた。」と素直に謝った。そこから2人で帰路を急ぎ、なんとか真っ暗になる前に山から出ることができた。

 

その彼は、率直に言うと勉強が不得意で、スポーツも特にできるわけではなく、学校カーストの最下層にいた。その彼と仲良くしていた私に、「あいつと仲良くするのをやめろよ」と言い、私を無視しはじめた友達もいた。でも、どっちが真の友達かは明らか。彼は本当に楽しい思い出を沢山つくってくれた。そのような友達が今いるかな、などと考えてしまう、今日この頃です。