京都で生まれた男

実は京都生まれである。関東に就職するまで、京都市上京区、北野天満宮の近くに住んでいた。北野天満宮はお参りに行くところではなく、セミを取ったり、夏休みの宿題の写生に行く場所。また、石田三成に仕えた島左近のお墓がある立本寺もかなり近く、境内で野球をして遊んでいた。ボールがお堂に当たることもあり、今思えば罰当たりなことをしていたと思う。京都の人は寺社仏閣や、歴史が動いた場所が身近にありすぎて有り難みが理解できない、とよく言われる。全くその通りである。

 

京都出身と分かった途端によく言われることの一つは、京都人は嫌いだ、ということである。京都人は何を考えているのかわからない、「ぶぶ漬けでもどうですか」が「そろそろ帰って下さい」という意味だと理解できるわけない、今も京都が都だと思っていてお高くとまっていいる、というような非難である。ぶぶ漬けのくだりについては、生まれてこの方、言ったことも、聞いたこともない。京都人のほぼ100%が、私と同じように、ぶぶ漬け攻撃を誰かにしたことも、受けたこともないと思う。

 

よく言われることのもう一つは、京都出身なのに京都大学になぜ進学しなかったのか、という質問である。これは出身大学を聞かれ、他の国立大学の名前を出した瞬間によく言われることである。京大に進学しなかったのではなく、したくても出来なかったのである。当時、数学が得意でなく、受験の時にかなり困った。大学受験の頃は、まだ貧弱なニューラルネットしか脳内に形成されておらず、考える能力が不足していた、と勝手に過去の自分を理解している。つまり、脳が早熟ではなかったのだと、自分を納得させているのである。アラサーの頃に、ようやく脳内のニューラルネットワークが充実したと自分に言い聞かせている。

 

京都市は盆地なので夏は暑く、冬は寒い。また、大きな駐車場がある飲食店が少ないなど、欠点を挙げれば沢山ある。まあでも、市内から近くに御室や北山などの自然があり、学生の街ならではの小洒落た店があったりもするので、そこそこ楽しい街なのではと思う。もう一度住みたい場所である。