トレッキング

トレッキングが趣味である。コロナ禍になってから行く回数がめっきり減ってしまったのですが。そもそもトレッキングを始めようと思ったきっかけは、アメリカのグランドキャニオン国立公園である。約10年前、グランドキャニオンに旅行した時に、キャニオンをコロラド川まで降りていくトレッキングコースがあり、谷底にファントムランチという宿泊施設があることを知った。そのコースやファントムランチが凄く魅力的に見えたのと同時に、ファントムランチに到達するのに行き(下り)は46時間、帰り(上り)はその倍の時間を要することがわかった。これぐらい時間のトレッキングになると、やはりそれなりの経験がないと難しい。なので、トレッキングを始めたというわけである。ちなみに、ラバに乗ってファントムランチに行くツアーがあり、歩かないという選択もできる。ただし、ツアーに参加するためには英語が話せないとダメです。

 

いずれにせよ、グランドキャニオンへの旅行によって、急にトレッキングに目覚めたわけである。以降、10年にわたり様々なトレッキングスポットに出かけたわけであるが、一番印象に残っているのは尾瀬である。水芭蕉などの湿原に咲く植物が綺麗とか、木道が素晴らしいとか、そういうことで印象に残っているのではない。

 

2011年の7月に尾瀬にトレッキングに行った際、大雨に遭遇した。山小屋に宿泊する予約をしていたので、雨の中を山小屋まで移動、宿泊の翌日はさらにひどい雨に見舞われた。山小屋のスタッフに、「帰るならば早く戻った方がいい」、と言われたので雨の降りしきる中、急いで尾瀬ヶ原の入口にあるビジターセンターまで戻った。ビジターセンターに到着して休憩していると、今度は「尾瀬に宿泊でなく、帰る方は今すぐに帰路についてください」、とのアナウンス。至急、荷物を再び担いでビジターセンターを出発した。ビジターセンターからバスの発着場所(鳩待峠)に戻る途中、増水して川幅が23mとなった小川を2箇所、横断しなければならなかった。増水していたが、小さい頃から自然の中で遊んでいた自分はさほど恐怖は感じず、意外と簡単に横断できた。一方で、一緒に行動していた嫁さんは足がすくんでしまい、横断するのに補助が必要だった。また女性は男性よりも体重が軽いので流されやすい。自分基準で行動できる、できないの判断をしてはダメなことを、この時に学ぶことができた。

 

また、3年前に母親を亡くしたが、危篤を知らせる電話を尾瀬で受けた。尾瀬でも徐々に携帯電話の電波が入るようになってきている。尾瀬ヶ原の真っ只中(見晴)で危篤の電話を受け、そこから帰宅の途につき、最終の新幹線で地元に向かった。その新幹線で殺傷事件に遭遇するという、とんでもない一日を過ごしたことは一生忘れないと思う。尾瀬は素晴らしいトレッキングスポットだが、私にとっては他の出来事の印象が強い場所になってしまった。でも、もちろん、今後も定期的に訪れたいと思って場所の一つである。