多軸疲労試験

- Multi-axial fatigue test - 

けんきゅうの研究所 Research Lab.:多軸疲労試験、試験装置

例えば、綱引きを考えた場合、参加者が綱を引きあっている間は、綱には綱の長さ方向に引っ張る力が加えられていますよね。このように、力がある一つの方向に加わっている場合もあれば、風を受ける風車のように、風の向きによっていろいろな方向から力を受ける場合もあります。金属に力を繰り返し加えることで、金属が破壊に至る金属疲労という現象があります。この金属疲労という現象は力の方向に影響を受けます。つまり、ある一つの方向から力が加わるのと、いろいろな方向から力が加わるのでは、破壊に至るまでの繰り返し数(寿命)が異なります。このような金属疲労は多軸疲労などと呼ばれていて、力の作用する方向が寿命に及ぼす影響を明らかにしようと、国内外問わず、多くの研究者がこの分野の研究に取り組んでいます。

 

このような多軸疲労の現象を解明するためには、いろいろな方向からの力を人工的に発生させることができる試験装置を用意し、実際に金属材料をその装置で壊してみることが有効です。実際、そのような試験ができる多軸疲労試験装置が存在し、市販されています。市販されている装置の多くは、2つの方向から力を加えることができる、2軸の試験装置です。これに対して、ポンさんの論文では、3つの異なる方向から力を加えることができる、3軸の疲労試験装置(図1)を提案しています(1)(2)

 

ここで、「何で3つの方向から力を加える必要があるの?」と疑問に思いますよね。「何で3方向なのか」ということですが、答えは、3方向から力を加えられる装置だと、どのような方向からの力もその装置で再現できるからです。もう少し詳しく言うと、「どのような力も」というのはちょっと言い過ぎで、厳密には“物の表面に作用する”どのような力も再現できる、というのが正しい説明になります。物の表面からき裂が発生して壊れる、というのはよくあるパターンですから、壊れるか壊れないかの研究をする際に、物の表面に作用する力の状態を再現することには意味があります。

 

物の表面に作用するある力を書き表す場合、図2のように、3つの独立した力で表現されます。このことは、3つの力を独立して発生させれば、どのような力も再現できることを意味します。この3軸試験装置の試作はあるメーカーさんにお願いしました。特注の装置の組み立てを得意とする職人気質のエンジニア、試験装置の設計者など、多くの方に熱心に取り組んでいただきました。試作を担当いただいたエンジニアはご自身の体調の関係で早期退職をされたので、もうそのメーカーでは働いておられませんが、我事のように熱心に装置の試作にご協力いただいたことに本当に感謝しています。いずれにせよ、沢山の関係者のご協力があって、3軸試験装置は試作を経て、最終型の完成まで到達できました。素直に感謝です。

けんきゅうの研究所 Research Lab.:多軸疲労試験、面内力の表現

図2 3方向の力の合成であらゆる面内力を表現