インパクトファクター

- Impact Factor -

けんきゅうの研究所 Research Lab.:インパクトファクター

論文が掲載される学術誌に付いている数値。この数値が大きいと、多くの研究者がその学術誌を読んで、掲載されている論文を参考にしているということ。第三者機関が決定している数値で、ミシュランがレストランなどに星を与えているのと同じイメージです。ミシュランの星の場合は、食事に行く際に星の数を参考にするわけですが、インパクトファクターの場合は研究者が論文を投稿する際に参考にします。

 

インパクトファクターの数値が大きいということは、その学術誌に掲載される論文が多くの研究者に引用されていることを意味します。つまり、その学術誌に掲載された論文を多くの研究者が参考にして研究をしている、ということです。研究者は自分が執筆した論文を多くの研究者に読んで欲しいので、インパクトファクターの数値の大きな学術誌に論文を投稿したいと考えます。また、研究機関に勤める研究者の昇進の条件として、インパクトファクターの数値の大きい学術誌に論文が掲載されているか、がチェックされたりします。このようなこともあるので、ますます研究者はインパクトファクターの数値の大きな学術誌に論文を投稿したいと思うのです。

 

その結果、日本の学術誌に異変が起こりました。具体的には、日本語の学術誌に投稿される論文の量や質が低下するという問題が発生したのです。日本語の学術誌はほぼ日本の研究者しか読まず、日本の研究者しか参考にしない(引用しない)ので、英語の学術誌に比べるとインパクトファクターの値が小さいのです。昇進のこともあるので、インパクトファクターの値が小さい学術誌への投稿を、日本の研究者もしなくなりました。その結果、日本語の学術誌に掲載される論文の数が減り、質も低下したというわけです。日本語の学術誌は山のようにあるので、全てを対象に詳しいことは言えませんが、私が投稿したことのある日本語の学術誌は1990年代半ば頃までは掲載される論文の質、量ともに素晴らしい学術誌でした。海外の研究者がわざわざ日本語を母国語に翻訳して読むような学術誌でした。ポンさんもいつかこの学術誌に自分の執筆した論文を掲載したいと思っていました。ところが、1990年代後半から2000年代になるとあからさまに学術誌が薄くなっていき、見た目が残念な感じになりました。

 

日本語の学術誌を発行しているのは、同じ分野の研究者が集まって組織する団体、すなわち、学会と呼ばれている団体です。発行する学術誌が残念な感じだと、学会自体も大丈夫か?という感じに思われるので、学会も発行する学術誌のインパクトファクターを大きくする努力をしています。今後どうなるかわかりませんが、自分達が発行する学術誌を差しおいて、海外の学術誌に論文を投稿したからこうなったのでは...、と少し思ってしまいます。

 

あと、日本の学会が発行する学術誌に論文を掲載するのにはお金がかかることが多いのです。すなわち、論文をある学術誌に投稿して掲載が認められたとしても、実際に掲載してもらうためには費用がかかります。数万円が相場と思います。一方で、インパクトファクターが大きく、有名な海外の学術誌の場合、掲載料が無料の場合が多いのです。つまり、そのような学術誌は発行部数が半端なく多いので、論文の著者から掲載料を徴収しなくても購読料収入で利益をあげられるのです。こういう状況になると、ますます、日本の学会が発行する学術誌は厳しいですよね。

 

なかなか悩ましい問題なのですよね。今の有名な学術誌が成功しているやり方を採用して、日本の学術誌が同じように成功するのは、今からでは無理だと思います。学術誌に掲載される論文のレベルが上がる次世代のやり方を考えれば良いと思います。そのようなやり方というのは、もはや、学術誌というような形態ではないかもしれないですね。