溶接部の強度

- The strength of welded joints -

けんきゅうの研究所 Research Lab.:溶接部の強度

溶接というのは金属をつなげる技術ですが、溶接で作った構造物は、やはり溶接部が弱点になることが多いです。金属に力が繰り返し作用することで発生する金属疲労という現象は、溶接部などの材料の接続部分でよく生じます。したがって、溶接を採用した構造を設計する際には、溶接部から金属疲労が生じないように設計する必要があります。

 

Hobbacherさんの論文(1)には溶接部の金属疲労に関するデータが上手く整理されています。溶接部とひとことで言っても、2枚の板が真っ直ぐになるように板の端と端をつなぐ場合もあれば、2枚の板を垂直につなぐ場合もあり、様々なつなぎ方が存在します。また、溶接では金属を溶かし、溶けた金属がつなぐ役割を果たしますが、つなぐ役割を果たす金属の量を多くするために、つなぐ板の端の形状をあらかじめ切り欠いておいたりします。この切り欠きの程度に応じて、溶ける金属の量が変わり、金属疲労の起こりやすさが変わります。さらに、溶けた金属が冷えて固体になる際に体積が減少するので、一度溶けた金属部分には引っ張る力が発生します。この力が金属疲労を起こしやすくします。そこで、引っ張る力を除去するために、溶接後に加熱する、小さい金属の球をぶつけるなどの後処理をします。

 

このように、溶接部の金属疲労は、つなぎ方、溶けた金属の量、後処理などに影響されるので、様々な実験データを上手く整理するのは大変なことです。その大変な仕事を成し遂げ、結果的に、欧州、米国の主な溶接部の設計指針や規格がこの整理の方法を採用しているので、論文の筆者らの貢献は非常に大きいです。実際、ポンさんもこの論文に掲載されているデータを採用した規格を使って、溶接構造の設計の適切さをチェックしたことが何度もある(2)ので、この仕事の社会貢献は非常に大きいと実感しています。

  1. Hobbacher A. (2008) Recommendations for Fatigue Design of Welded Joints and Components. IIW Doc. XIII-2151r3-07/XV-1254r3-07. Int Inst Welding
  2. Takeda, N., Naruse, T. (2015) Optimal design of welded structure with structural and local-notch stresses based on International Institute of Welding recommendations. Struct Multidisc Optim 51, 1133-1147. https://doi.org/10.1007/s00158-014-1201-0